企画

【文豪競演】化ける男たち|山本周五郎・野村胡堂・佐々木味津三 朗読三選

見かけ、役割、姿。又平、八五郎、七化け役者――三人の男が見せる、三つの「化ける」を朗読で辿る文豪競演企画です。
又平、八五郎、七化け役者が並ぶ『男は、何に化けるのか』文豪競演のアイキャッチ
又平、八五郎、七化け役者が並ぶ『男は、何に化けるのか』文豪競演のアイキャッチ
見かけ、役割、姿――三人の男が見せる三つの「化ける」。

男は、何に化けるのか

人は、見かけで終わらない。

笑われる下郎。思いがけない小判を手にした八五郎。七つの姿を使い分ける役者。見かけ、役割、そして姿。三人の男が見せる、三つの「化ける」を、文豪たちの物語から辿ります。

イメージ画像で辿る「化ける男たち」

化けたのか。それとも、正体が見えただけなのか。

「化ける」と聞けば、まず変装や早変わりを思い浮かべます。しかし、人間が化けるのは、顔や衣装だけではありません。

周囲から愚鈍だと笑われていた男の、本当の姿が現れる。いつも軽く見られている男が、事件を動かす。いくつもの顔を操る男が、ついに正体を暴かれる。この三作品が描くのは、見かけと本性の距離です。人は何を隠し、何を見せ、誰の目によって別人に変わるのでしょうか。

人を化けさせるのは、衣装か。役割か。それとも、見る側の目か。

収録作品

壱 山本周五郎『半化け又平』

笑われた男の、本当の姿。

播州姫路、古中条流の剣法を伝える八重樫道場。そこで下郎として働く又平は、間の抜けた振る舞いと、欠けた皿や茶碗を集める妙な道楽から、「半化け」と呼ばれて笑われていました。

しかし、道場主・八重樫主水の娘、椙江だけは、又平の眼差しに隠された何かを感じ取ります。やがて道場の跡目をめぐる局面で、誰も知らなかった又平の姿が明らかになっていきます。

聴きどころ:隠された正体/剣術道場/見る目/恋慕

「この物語を聴く」

弐 野村胡堂『初姿銭形平次 八五郎手柄始め』

一両小判から始まる、八五郎の晴れ舞台。

正月早々、珍しく一両小判を手にした八五郎が、上機嫌で平次のもとへ現れます。小判の由来は、行方不明となった材木商が娘・おさめに残した謎の紙片。八五郎は知恵を働かせて謎を読み、平次とともに事件の奥へ踏み込んでいきます。

いつもは軽口ばかりの八五郎が、思いがけず事件を動かす一編です。

聴きどころ:八五郎/謎の紙片/一両小判/初手柄

参 佐々木味津三『七化け役者』

七つの顔を持つ男を、右門が追う。

品川宿で尾州侯の大名行列に毒矢が射ち込まれ、犯人は大名駕籠ごと姿を消します。右門が追う先には、偽大名、ご家人、鍼灸師、女姿へと巧みに姿を変える早変わり役者・市村宗助。

芝居小屋の舞台を終着点として、右門の眼力と役者の変装術がぶつかります。見せるための芸が、隠れるための技へ変わる、華やかな変装捕物です。

聴きどころ:右門捕物帖/毒矢/早変わり/芝居小屋

「この物語を聴く」

舞台袖トーク

opening

人は、何に化けるのでしょうか。笑われている下郎が、誰も知らない姿を見せる。お調子者の八五郎が、事件を動かす男になる。そして早変わり役者が、七つの顔で江戸を欺く。今回の文豪競演は、「化ける男たち」。見かけ、役割、姿――三つの化け方をお楽しみください。

山本周五郎 半化け又平

又平が別人へ化けたのではありません。変わったのは、又平を見る人々の目です。笑われていた男の内側に、椙江だけが気づいていたもの。それが姿を現したとき、「半化け」という呼び名の意味も反転します。次は、銭形平次の相棒・八五郎。こちらは、お調子者が手柄者へと化ける物語です。

八五郎手柄はじめ

一枚の紙片を読み、一両小判を手にした八五郎。名探偵になったわけではありませんが、事件を動かしたことは確かです。又平は見かけを裏切り、八五郎は役割を飛び越えました。最後の男は、顔も身分も次々と変えていきます。佐々木味津三『七化け役者』。右門と早変わり役者の知恵比べです。

アフタートーク

又平は、本当の自分を現しました。八五郎は、自分にもできることを証明しました。市村宗助は、本当の自分を隠すために姿を変えました。同じ「化ける」でも、ある者は正体へ近づき、ある者は正体から遠ざかります。

人を決めるのは、顔でも肩書でもありません。何を隠し、何を選び、どの瞬間に本当の姿を見せるか。皆さまには、誰の化け方が最も心に残ったでしょうか。

次に辿るテーマは?

  • 剣客三部作――次は、剣を持つ者の運命を辿る。
  • 忠義は 誰が為ぞ――人は、誰のために自分を変えるのか。
  • 江戸怪談始末――見えているものは、本当に人なのか。