朗読作品

ながい坂 上巻

山本周五郎 →
人は、どこまで坂をのぼれるのか。身分の壁に触れた少年・小三郎の成長と、藩の未来が交差してゆく山本周五郎の長編時代小説。
山本周五郎『ながい坂 上巻』丸竹書房版の表紙

THIS WORK

この作品を、どう辿りますか。

あらすじ

身分の壁に触れた少年・小三郎の悔しさは、学問と剣への向上心へ変わり、やがて藩の未来と交差してゆく。徒士組の家に生まれた少年の成長を軸に、武家社会の家格、教育、家の責任、藩政、農と土地、そして人が自分の生き方を選ぶことの難しさを重層的に描く長編時代小説。上巻では小三郎の少年期から、師との出会い、身分差への葛藤、若き藩主や家臣たちをめぐる政治の動きへと物語が広がっていく。

登場人物

小三郎
本作の主人公。徒士組の家に育つ少年。聡明で負けず嫌い。身分や家格の壁に直面しながら、学問と剣に道を求める。
阿部小左衛門
小三郎の父。二十石ばかりの組頭。温厚でまじめな人物で、家の現実と身分の重さを知る。
小四郎
小三郎の弟。病弱で、家族に大切に育てられている。
武高伊之助
小三郎の幼なじみ。おとなしく気弱な性格で、少年時代の小三郎を映す身近な友人。
谷宗岳
尚功館の教官。江戸から招かれた学識ある人物で、小三郎に大きな影響を与える。
小出方正
藤明塾の教師。阿部家の蔵書や古記録に関わり、小三郎の知的好奇心を刺激する。
米村青淵
仁山村の豪農の隠居。農と土地の現実に深く根ざした見識ある老人。
井戸勘助
藤明塾の武芸道場の助教。小三郎の剣の稽古を見守る実直な指導者。
飛騨守昌治
新しい藩主。若く、気性も器量も強い。藩の将来を左右する重要人物。
三浦主水正
藩主に近い若い側近。誠実で思索的な人物で、藩政と改革の流れに深く関わる。
杉本大作
主水正に仕える若い家士。藩内事情に通じ、現実を見る目を持つ。
櫨幾右衛門
郡奉行。農政や年貢など領内の現実に関わる役職にある。
滝沢主殿
有力家の当主。重い家格と権威を体現し、小三郎の意識に強い影を落とす。
滝沢兵部
滝沢家の嫡子。幼名は荒雄。特別な期待を背負って育てられ、家に縛られた者の苦しさも示す。
岩上平作
小屋頭。山や土地の事情に通じた実務の人。
信田十兵衛
材木奉行。藩内の事情や人物評をめぐる場面に登場する。
山根蔵人
家中の一人。藩内の人間関係を形づくる人物。
つる
山根蔵人の娘。のちに主水正の妻となり、その物語に緊張を与える。
雪江
山内家の娘。家中の華やかな側面を感じさせる人物。
芳野
つるに仕える侍女。

用語集

徒士組
藩士のうち、比較的下級の家格に属する者たちの組。阿部家はこの徒士組に属している。
組頭
組のまとめ役。阿部小左衛門の役目。
尚功館
上位層の子弟を中心とする藩校。学問・武芸ともに第一級の教授が集められている。
藤明塾
中以下の藩士や町家の者も学べる藩校。小三郎が学ぶ重要な場の一つ。
表祐筆
記録や文書、筆記に携わる役職。阿部家の祖先はかつてこの役にあった。
蔵書
家に伝わる書物。阿部家には多くの和漢の書物が残されている。
曝書
書物を虫や湿気から守るため、風にあてること。
拾礫紀聞
藩内で起こった災厄、事件、騒動などを記した古記録。小三郎の知的関心を強く刺激する。
城代家老
城や藩政を担う重職。滝沢家の重みを象徴する地位。
郡奉行
領内の農政や年貢などを扱う役職。
御物成収納帳
年貢や納入物の収納を記録した帳面。
大沼
小三郎の少年時代に深く結びつく場所。上巻の原風景の一つ。
井関川
大沼に流れこむ川。地理や開発計画の面でも重要な意味を持つ。
下馬川
大沼から流れ出る川。城下の地形と深く結びついている。
お止め場
狩猟などが禁じられる場所。
元服
男子が成人としての名を名乗る節目。
御小姓
主君のそば近くに仕える役。若者にとって出世の入口とも見なされる。
水をせき止めたり、導いたりするための土木設備。藩政と農地開発の重要な鍵となる。
野見小屋
農地や収穫の監視に関わる小屋。土地と支配の接点を示す施設。

物語を巡る

— 六つの視点から『ながい坂 上巻』を巡る —

物語を辿る

— 十の章と象徴場面から『ながい坂 上巻』を辿る —

第一章

越えるべきものは、身分か、自分自身か。

『ながい坂 上巻』第一章の象徴場面「森番小屋にて」
森番小屋にて

第二章

才があるほど、人は早く世間の壁を知る。

『ながい坂 上巻』第二章の象徴場面「森番小屋にて」
森番小屋にて

第三章

一人の願いが、やがて藩の未来へつながってゆく。

『ながい坂 上巻』第三章の象徴場面「仁山村にて」
仁山村にて

第四章

与えられた地位より、どう生きるかが人を決める。

『ながい坂 上巻』第四章の象徴場面「山根邸にて」
山根邸にて

第五章

救う者と、利益を守る者。そのあいだで時代は揺れる。

『ながい坂 上巻』第五章の象徴場面「佐渡屋仮宅にて」
佐渡屋仮宅にて

第六章

正しさだけでは、人も国も動かせない。

『ながい坂 上巻』第六章の象徴場面「森番小屋にて」
森番小屋にて

第七章

守るべきものが増えるほど、決断は孤独になる。

『ながい坂 上巻』第七章の象徴場面「滝沢邸にて」
滝沢邸にて

第八章

見えない傷ほど、人の生き方を深く変えてゆく。

『ながい坂 上巻』第八章の象徴場面「銀杏屋敷にて」
銀杏屋敷にて

第九章

理想は、現実に触れたとき初めて試される。

『ながい坂 上巻』第九章の象徴場面「梅の井にて」
梅の井にて

第十章

家に縛られる者もまた、自分の坂をのぼっている。

『ながい坂 上巻』第十章の象徴場面「銀杏屋敷にて」
銀杏屋敷にて

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