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しじみ河岸

その自白は、真実だったのか。

七夕の夜、人が死んだ。娘は、自分が殺したと言った。それで事件は終わるはずだった。

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STORY

あらすじ

苦い人情と、静かな正義。

物語の核心となる結末には触れず、事件の発端と舞台をご紹介します。

深川冬木町、しじみ河岸。

左官の卯之吉を刺し殺したとして、娘お絹は自ら罪を認めていた。だが、新任の吟味与力・花房律之助は、その自白のあまりの不自然さに疑いを抱く。

沈黙を守る長屋の人々、役人を拒む町の空気、そして執拗な妨害。

若き与力がたどり着くのは、貧しさと疲労、そして弱い者だけが背負わされる残酷な真実だった。

山本周五郎が描く、苦い人情と静かな正義の物語。

CASE FILE

一件の記録

犯人探しから始まらない。すでに自白はある。だからこそ、吟味与力・花房律之助はその言葉の奥を見ようとする。

01|七夕の夜

ひとりの男が殺された。

02|自白

娘は、みずから罪を認めた。

03|疑問

ただひとり、その供述を疑った男。

04|沈黙

なぜ、長屋の人々は口を閉ざすのか。

05|問い

見えていた事実は、すべて正しいのか。

CHARACTERS

事件をめぐる人々

ひとつの自白をめぐり、異なる立場の人々が交わる。家族、町、奉行所――それぞれが何を見つめているのか。

作品制作で使用した『しじみ河岸』主要キャラクターの人物見本画像
主要キャラクター設定画(人物見本)— クリックで拡大

事件と家族

花房律之助

はなぶさ りつのすけ

南町奉行所の新任吟味与力。お絹の自白に疑問を抱き、独自に再吟味へ踏み出す青年。

お絹

おきぬ

卯之吉殺しを自白した娘。病身の父と弟を養うため、過酷な労働を続けてきた。

卯之吉

うのきち

殺された左官職。実直で、遊びにも溺れない男として描かれる。

直次郎

なおじろう

お絹の弟。幼い頃の事故で心身に障害が残っている。無垢な言葉が真相への糸口になる。

勝次

かつじ

お絹の父。中風で寝たきり。

奉行所と捜査の人々

高木新左衛門

たかぎ しんざえもん

律之助の従兄で、奉行所の上位役人。律之助を陰で支える。

石出帯刀

いしで たてわき

囚獄奉行。律之助の再吟味に便宜をはかる。

志村吉兵衛

しむら きちべえ

同心。牢での取り次ぎ役。

深川の人々

源兵衛

げんべえ

長屋の差配。住人を取りまとめるが、どこか歯切れが悪い。

伊与吉

いよきち

卯之吉の父。息子を失っても、感情を押し殺したような態度を見せる。

相模屋儀平

さがみや ぎへい

冬木町一帯の地主・家主で、質屋・両替商。町の実力者。

清太郎

せいたろう

相模屋の若旦那。事件の核心に関わる人物。

FUKAGAWA · WINTER TOWN

深川を歩く

水の町に生きる、人びとの気配。

舞台は江戸・深川冬木町、しじみ河岸。事件を追うだけでは見えてこない町の姿を、河岸の仕事、長屋の暮らし、夕暮れの水路という三つの風景からたどります。

※これらの画像は作品世界をイメージした創作イラストです。当時の特定地点の姿を正確に復元したものではありません。

THEME

貧と罪と。
裁くことと、救うこと。

『しじみ河岸』は、犯人探しの前提をひっくり返す。罪を認めた娘の言葉に疑問を抱く若き与力を通して、貧困、沈黙、正義、そして人間の情を描く。

YAMAMOTO SHUGORO

山本周五郎、51歳。

1954

『オール読物』10月号に初出

戦後の円熟期に書かれた作品。自白から始まる事件を通して、裁きと貧困、人情のあいだを描く。

2016

テレビドラマ化

BSジャパン開局15周年特別企画『山本周五郎人情時代劇』第9話として2016年2月2日に放送。

VISUAL JOURNEY

物語を巡る

結末を明かさず、作品の核心へ近づく六つの視点。

LISTEN

物語を聴く

山本周五郎『しじみ河岸』全文朗読。読み手:七味春五郎。約91分の人情ミステリー。

YouTubeで全文朗読を聴く

作品・資料情報

初出:『オール読物』文藝春秋新社、1954年10月号。青空文庫 図書カードNo.57619。底本:『山本周五郎全集第二十五巻 三十ふり袖・みずぐるま』新潮社、1983年1月25日。映像化:BSジャパン『山本周五郎人情時代劇』第9話、2016年2月2日放送。

『しじみ河岸』の主要キャラクター設定画(拡大表示)

しじみ河岸|主要キャラクター設定画