あらすじ
苦い人情と、静かな正義。
物語の核心となる結末には触れず、事件の発端と舞台をご紹介します。
深川冬木町、しじみ河岸。
左官の卯之吉を刺し殺したとして、娘お絹は自ら罪を認めていた。だが、新任の吟味与力・花房律之助は、その自白のあまりの不自然さに疑いを抱く。
沈黙を守る長屋の人々、役人を拒む町の空気、そして執拗な妨害。
若き与力がたどり着くのは、貧しさと疲労、そして弱い者だけが背負わされる残酷な真実だった。
山本周五郎が描く、苦い人情と静かな正義の物語。
苦い人情と、静かな正義。
物語の核心となる結末には触れず、事件の発端と舞台をご紹介します。
深川冬木町、しじみ河岸。
左官の卯之吉を刺し殺したとして、娘お絹は自ら罪を認めていた。だが、新任の吟味与力・花房律之助は、その自白のあまりの不自然さに疑いを抱く。
沈黙を守る長屋の人々、役人を拒む町の空気、そして執拗な妨害。
若き与力がたどり着くのは、貧しさと疲労、そして弱い者だけが背負わされる残酷な真実だった。
山本周五郎が描く、苦い人情と静かな正義の物語。
犯人探しから始まらない。すでに自白はある。だからこそ、吟味与力・花房律之助はその言葉の奥を見ようとする。
ひとつの自白をめぐり、異なる立場の人々が交わる。家族、町、奉行所――それぞれが何を見つめているのか。

はなぶさ りつのすけ
南町奉行所の新任吟味与力。お絹の自白に疑問を抱き、独自に再吟味へ踏み出す青年。
おきぬ
卯之吉殺しを自白した娘。病身の父と弟を養うため、過酷な労働を続けてきた。
うのきち
殺された左官職。実直で、遊びにも溺れない男として描かれる。
なおじろう
お絹の弟。幼い頃の事故で心身に障害が残っている。無垢な言葉が真相への糸口になる。
かつじ
お絹の父。中風で寝たきり。
たかぎ しんざえもん
律之助の従兄で、奉行所の上位役人。律之助を陰で支える。
いしで たてわき
囚獄奉行。律之助の再吟味に便宜をはかる。
しむら きちべえ
同心。牢での取り次ぎ役。
げんべえ
長屋の差配。住人を取りまとめるが、どこか歯切れが悪い。
いよきち
卯之吉の父。息子を失っても、感情を押し殺したような態度を見せる。
さがみや ぎへい
冬木町一帯の地主・家主で、質屋・両替商。町の実力者。
せいたろう
相模屋の若旦那。事件の核心に関わる人物。
水の町に生きる、人びとの気配。
舞台は江戸・深川冬木町、しじみ河岸。事件を追うだけでは見えてこない町の姿を、河岸の仕事、長屋の暮らし、夕暮れの水路という三つの風景からたどります。

しじみを扱う河岸。川から舟が着き、荷を運ぶ人の手が町の一日を動かす。物語の舞台には、水辺の労働と暮らしの息遣いがある。

長屋では隣人の暮らしがすぐ隣にある。助け合い、貧しさ、噂、沈黙。お絹が生きる町の距離感を、日々の風景からたどる。

人の行き来が落ち着き、橋の向こうへ日が沈む。昼の賑わいのあとに残る静けさは、物語の苦い余韻を思わせる。
※これらの画像は作品世界をイメージした創作イラストです。当時の特定地点の姿を正確に復元したものではありません。
貧と罪と。
裁くことと、救うこと。
『しじみ河岸』は、犯人探しの前提をひっくり返す。罪を認めた娘の言葉に疑問を抱く若き与力を通して、貧困、沈黙、正義、そして人間の情を描く。
戦後の円熟期に書かれた作品。自白から始まる事件を通して、裁きと貧困、人情のあいだを描く。
BSジャパン開局15周年特別企画『山本周五郎人情時代劇』第9話として2016年2月2日に放送。
結末を明かさず、作品の核心へ近づく六つの視点。
『しじみ河岸』を聴いたその先にも、物語は続きます。朗読、捕物帳、音楽、そして丸竹書房の世界へ。
山本周五郎の人情・恋愛・剣客・長編を、朗読でじっくり味わう。
YouTubeチャンネルへ MYSTERY事件の裏にある人間ドラマ。捕物帳・時代ミステリーの世界へ。
YouTubeチャンネルへ MUSIC主題歌・ミュージックビデオなど、文学から生まれる音楽を楽しむ。
YouTubeチャンネルへ初出:『オール読物』文藝春秋新社、1954年10月号。青空文庫 図書カードNo.57619。底本:『山本周五郎全集第二十五巻 三十ふり袖・みずぐるま』新潮社、1983年1月25日。映像化:BSジャパン『山本周五郎人情時代劇』第9話、2016年2月2日放送。