朗読作品
巾着切りの娘|銭形平次捕物控
野村胡堂 →三百八十両の盗難事件の奥で、娘の幸福を守るため過去と向き合う父・彦兵衛を描く、野村胡堂『銭形平次捕物控』の人情篇。読む・観る・聴く・辿る体験を一つの作品ページにまとめます。

THIS WORK
この作品を、どう辿りますか。
娘は知らない。父の最後の仕事。
三百八十両を奪われ、死を選ぼうとした若い男女。二人を救った銭形平次がたどり着いたのは、娘の幸福を守るため、封じたはずの過去と向き合う父・彦兵衛でした。捕物の緊張と父娘の情が深く交わる、野村胡堂『銭形平次捕物控』の一篇です。
あらすじ
横山町の大店・増屋の養子徳之助は、本所で受け取った三百八十両を運ぶ途中、巧妙な罠にかけられて大金を奪われます。主人への申し訳が立たないと考えた徳之助は、恋人のお富とともに両国橋で死を選ぼうとしますが、銭形平次に救われます。
事件の手口を聞いたお富の父・彦兵衛は、犯人が昔の仲間「描き菊石の東作」だと見抜きます。彦兵衛には、娘に決して知られたくない過去がありました。亡き妻との約束を守り堅気に戻った父は、娘の未来を守るため、自ら三百八十両を取り戻そうとします。
登場人物
- 銭形平次 — 神田の御用聞き。事件を追いながら、彦兵衛の改心と父心を見守る。
- 彦兵衛 — お富の父。腕の良い左官。かつて巾着切りの仲間だった過去を持つ。
- お富 — 十九歳になる彦兵衛の娘。増屋に奉公し、徳之助と恋仲にある。
- 徳之助 — 増屋の養子。三百八十両を盗まれ、自責の念に追い詰められる。
- 描き菊石の東作 — 田原町の経師屋。表向きは堅気だが、用心深い巾着切り。
- 八五郎 — 平次の子分。通称ガラッ八。
作品の見どころ
- 父娘の物語 — 娘に過去を明かさず、その幸福を守ろうとする彦兵衛の覚悟が物語の中心です。
- 昔の技で金を取り戻す父 — 堅気になった男が、娘のために封じた技を再び使う逆説が物語を動かします。
- 平次の「待つ」人情 — すぐに捕らえるのではなく、人間の事情を見抜いて見守る平次の懐の深さが際立ちます。
- 法と情のあわい — 正しさだけでは割り切れない江戸の人情が、結末に長い余韻を残します。
物語を辿る
両国橋、夜桜の心中

戸を閉ざす父

元巾着切りの願い

東作の卑劣な条件

盗まれた金を盗み返す

花嫁を見送る父

用語・江戸のことば
- 巾着切り(きんちゃくきり) — 人混みなどで財布を盗む者。掏摸。
- 相対死(あいたいじに) — 男女などが申し合わせて死ぬこと。心中。
- 経師屋(きょうじや) — 襖、障子、掛物などを仕立てる職人。
- 描き菊石(かきあばた) — 顔にあばた模様を描く東作の変装・異名。
朗読で聴く
解説画像で辿る







作品情報
- 作品:巾着切りの娘
- シリーズ:銭形平次捕物控
- 作者:野村胡堂
- 朗読:七味春五郎
- 制作:丸竹書房
物語を読む
OTOBON READER