五月雨の降る松井田宿、行灯が灯る上州屋

山本周五郎 時代小説・怪談

幽霊奴の
助太刀

死んでも、主人を守る。

雨の宿場町。ひとりの娘をめぐって、
笑いと欲望と、死者の忠義が交錯する。

下へ進むと、物語の世界が開きます
亡くなった三平のそばで悲しむお竹
物語の始まり

五月雨に閉ざされた、
一軒の宿。

松井田宿の木賃宿「上州屋」。若い娘・お竹は、頼りにしていた若党・三平を失い、ひとり取り残される。

親切そうな宿主と、その息子。しかし、娘が持っていた二百両をきっかけに、人の心が思わぬ姿を現し始める。

三つの気配

雨、欲、そして霊。

三つの場面を選び、物語に流れる空気を辿ってください。

残された娘の場面
残された娘

旅の空に、ひとり。

頼りにしていた三平を失い、お竹は見知らぬ宿に取り残される。

黄金の誘惑の場面
黄金の誘惑

金が、人を変える。

畳へこぼれた二百両。宿の主人が見せたのは、露骨な態度の変化だった。

危うい恋の場面
危うい恋

恋は、脅しに変わった。

滑稽な恋文は、やがて娘の身を脅かす執着へと変わってゆく。

初七日の夜の場面
初七日の夜

死者は、誰を守るのか。

新しい墓のある卵塔場。暗闇で娘を呼ぶ影の正体は――。

上州屋に集う人々

登場人物帖

主要人物を選ぶと、場面画像と人物紹介が切り替わります。

お竹の場面画像
旅の娘

お竹

父の仇を追って旅する武家の娘。三平の死後も気丈に振る舞う。

三平の場面画像
忠義の若党

三平

お竹に仕える若党。旅の途中で病に倒れ、上州屋で亡くなる。

与太郎の場面画像
宿屋の息子

与太郎

十九歳、大柄で純朴にも見える青年。お竹への恋慕が次第に危うさを帯びる。

与平次の場面画像
上州屋の主人

与平次

与太郎の父。娘を追い出そうとするが、二百両を見て態度を変える。

作蔵の場面画像
馬方

作蔵

与太郎に虫づくしの附文を勧める、世慣れた馬方。

物語の言葉

時代小説の小さな辞典。

宿場や仏事にまつわる言葉を知ると、物語がいっそう鮮やかになります。

木賃宿
炊事用の薪代などを払って宿泊する簡素な宿。
旅籠
旅人を泊め、食事も提供する宿。
卵塔場
卵形の墓塔などが並ぶ墓地。
初七日
死後七日目に営む供養。
附文
人に差し出す手紙。この作品では恋文。
虫づくし
虫の名を織り交ぜた言葉遊び。
胴巻
金銭などを入れて胴に巻きつける袋。
小判
江戸時代の金貨。
回向
読経の功徳を亡き人に向けること。
鉄如意
鉄でできた如意。僧が手にする仏具。
物語の結び

死してなお、
守り続けた。

死者の忠義は、誰のためにあったのか。

山本周五郎『幽霊奴の助太刀』。
物語の真相は、朗読の本編でお確かめください。

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