朗読作品

洟かみ浪人

吉川英治 →
粗野で頑固、世渡りは下手。けれど、どこまでもまっすぐな赤穂藩士・不破数右衛門。恋の思い違いと失意、そして主君の情を、滑稽と哀切を交えて描く吉川英治の時代短編。
吉川英治『洟かみ浪人』 橋上でお千賀と出会う不破数右衛門

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この作品を、どう辿りますか。

あらすじ

赤穂浅野家の藩士・不破数右衛門は、身なりも振る舞いも洗練とはほど遠い、無骨な若侍です。江戸藩邸でも周囲から浮きながら、偶然救った老人の娘・お千賀に心を奪われます。彼女の親切を恋心だと信じ、ひとり幸福な未来を思い描く数右衛門。しかし、お千賀には別の縁談が進んでいました。

恋に不器用で、世間の機微にも疎い男が巻き起こす騒動。その粗野な姿の奥にある正直さと忠義を、主君・浅野内匠頭だけは見捨てません。滑稽な失恋と、主従の情、人間の弱さと温かさが交差する一篇です。

登場人物

不破数右衛門

赤穂浅野家の藩士。粗野で世渡りは不得手だが、正直で頑固、武士としての矜持を強く持つ。

お千賀

小山田一閑の末娘。気立てがよく、数右衛門への自然な親切が思いがけない恋のすれ違いを生む。

小山田一閑

お千賀の父。橋上の騒ぎをきっかけに数右衛門と親しくなる。

小山田庄左衛門

お千賀の兄。江戸馴れした武士で、妹の縁談をめぐって数右衛門と対立する。

大高源吾

赤穂藩士。数右衛門を気遣う友人で、終盤の危機にも関わる。

浅野内匠頭長矩

赤穂藩主。扱いにくい数右衛門を単純に切り捨てず、その人間性を見つめる。

用語集

  • 浪人骨(ろうにんぼね) — 平和な元禄の武家社会になじまず、戦国以来の粗野で豪放な気風を残す人物像を示す作中の言葉。
  • 定府(じょうふ) — 江戸に常駐して勤務すること。数右衛門は国許から江戸詰へ転役する。
  • 運座(うんざ) — 俳諧の席で、題に応じて句を作り、互いに選評する集まり。
  • 猪牙舟(ちょきぶね) — 江戸の河川で用いられた細長い小舟。隅田川などの移動にも使われた。
  • 御書状(ごしょじょう) — 主君から託された重要な書状。終盤で数右衛門を追い詰める鍵となる。

物語を巡る

— 六つのビジュアルから『洟かみ浪人』を辿る —

物語を聴く

— 声で『洟かみ浪人』を辿る —

物語を辿る

— 全十三章の転換点を、物語の順に —

第一章「親の垢」

几帳面な赤穂藩江戸屋敷の中で、無骨で身なりも整わない数右衛門は周囲から浮いている。

赤穂藩江戸屋敷の御用部屋に立つ不破数右衛門

第二章「浪人ぼね」

千種川の川狩りで武芸を座興として求められ、数右衛門の浪人気質と矜持が露わになる。

千種川の川狩りで小舟に立つ不破数右衛門

第三章「作らぬ俳人」

風雅な俳諧の席へ連れ出された数右衛門は、洗練された空気の中でひとり所在なげに川を眺める。

深川の俳諧の席で所在なげに川を眺める不破数右衛門

第四章「最初の女」

橋上の騒ぎから老人を助けた数右衛門は、その娘・お千賀に初めて心を奪われる。

橋上の騒ぎを収め、お千賀と初めて出会う不破数右衛門

第五章「彼の場合」

小山田家で親切にされ、冬着まで合わせてもらった数右衛門は、お千賀の好意を恋だと思い込む。

小山田家でお千賀に冬着を合わせてもらう不破数右衛門

第六章「幻影」

雪の夜、庄左衛門に誘われた数右衛門は、縁談の話が進むものと期待する。

雪の夜の船宿で縁談の話を期待する不破数右衛門

第七章「雪見ぶね」

雪見の舟で思い込みを否定された数右衛門は、失意の中で隅田川をゆく。

雪の隅田川を進む舟で失意に沈む不破数右衛門

第八章「春待つ家」

仲間からお千賀の婚礼を知らされても、数右衛門は本人の心を聞くまで納得しようとしない。

仲間からお千賀の婚礼を知らされる不破数右衛門

第九章「竹垣根」

婚礼前夜、数右衛門は小山田家を訪れ、お千賀本人の意思を確かめようとする。

婚礼前夜の小山田家でお千賀の真意を問う不破数右衛門

第十章「厩の悍馬」

騒動は藩邸にまで伝わり、浅野内匠頭は数右衛門という不器用な家臣をどう扱うか見定める。

騒動を知り数右衛門を見定める浅野内匠頭

第十一章「宵の上汐」

転役となった数右衛門は霊岸島で仲間たちの見送りを受け、江戸を離れる。

霊岸島で仲間たちに見送られる不破数右衛門

第十二章「奈落に捜す」

出航直前、主君から預かった御書状が見当たらず、数右衛門と仲間たちは必死に探し回る。

出航前に失くした御書状を探し回る不破数右衛門たち

第十三章「涙笑流々相」

主君の寛大な言葉に涙する数右衛門。張りつめた場面は、思いがけない御書状の発見で人間味あふれる結末を迎える。

主君の情に涙し、御書状の思わぬ行方を知る不破数右衛門

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