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この作品を、どう辿りますか。

あらすじ
三年の江戸詰めを終え、彦根へ帰ってきた斎東与茂七。武芸に秀で、かつて進武館の筆頭として「野牛」と恐れられた男です。ところが、その留守中に道場の頂点へ立っていたのは、「白い虎」と呼ばれる若侍・金吾三郎兵衛でした。
三郎兵衛は与茂七の竹刀を道場へ投げ捨て、真正面から勝負を挑みます。誰もが二人の激突を予想するなか、与茂七は三郎兵衛の名を知ると、勝負をやめて立ち去ってしまいます。城中で再び迫られても、与茂七は自分の負けだと言い切ります。
やがて松子が運んだ手紙をきっかけに、二人は霧の松原湖畔で向き合います。勝負の後、与茂七が語ったのは、三郎兵衛の傲然とした姿の中に、二十八年間の自分自身を見たという告白でした。他人を打ち負かす強さから、自らの増上慢を知る強さへ。山本周五郎が、二人の荒武者を通して人間の成長を鮮やかに描く一篇です。
登場人物
- 斎東与茂七 — 二十八歳の彦根藩士。腕力と武芸に秀で、かつて進武館の筆頭・代師範を務めた。「野牛」と呼ばれるほど粗暴で負けず嫌いだったが、三郎兵衛との出会いを契機に自分自身を見つめ直す。
- 金吾三郎兵衛 — 三河岡崎藩の大番頭の三男で、金吾家へ婿入りした若侍。色白で端麗な容貌とは裏腹に、性格は峻烈。中村流の半槍と一刀流をよくし、進武館の筆頭として「白い虎」と呼ばれる。
- 松子 — 金吾五郎左衛門の一人娘で、三郎兵衛の妻。二十二歳。与茂七がかつて妻に迎えようと考えたことのある女性。三郎兵衛の書状を与茂七へ届ける。
- 金吾五郎左衛門 — 四百石の御具足奉行。男子がなく、一人娘の松子に三郎兵衛を婿として迎える。
- 当麻作左衛門 — 与茂七の叔父。両親を亡くした与茂七を育てた一徹な人物。奔放な甥の行状を案じている。
- 仁右衛門 — 当麻家の家扶。帰藩した与茂七に、叔父が立腹している事情を伝える。
- 榊市之進 — 与茂七の旧友。松子の結婚を知らせ、のちに三郎兵衛へ与茂七と松子について自分なりの解釈を語る。
- 鈴木中通 — 進武館の師範で、与茂七の恩師。
- 滝川伝吉郎 — 進武館の門人。帰藩した与茂七が「野牛」と恐れられていたことを三郎兵衛へ説明する。
- 金五郎 — 進武館で門人たちの雑用をする十七歳の少年。
用語集
| 用語 | 解説 |
|---|---|
| 進武館 | 彦根藩の武芸道場。本作では与茂七と三郎兵衛の因縁が始まる場所。 |
| 野牛 | 斎東与茂七の綽名。乱暴者で喧嘩早く、圧倒的な腕力を持つ彼の気質を表す。 |
| 白い虎 | 金吾三郎兵衛の綽名。白皙で端麗な容貌と、峻烈で驕慢な武人としての姿を重ねた呼び名。 |
| 半槍 | 通常の長槍より短めの槍。三郎兵衛は中村流の半槍をよくする。 |
| 一刀流 | 三郎兵衛が修める剣術。 |
| 江戸詰 | 藩士が江戸で勤務すること。与茂七は三年間の江戸詰めを終えて彦根へ帰る。 |
| 御具足奉行 | 具足・武具に関わる藩の役職。金吾五郎左衛門が務める。 |
| 礼日 | 家中が総登城して礼を行う日。本作では城中で三郎兵衛が与茂七を待ち受ける。 |
| 遠侍 | 城内で家臣などが控える場所。 |
| 青眼 | 刀を相手へ向ける基本的な構えの一つ。湖畔の勝負で三郎兵衛がとる。 |
| 亀形の丘 | 松原湖畔にある、三郎兵衛が与茂七へ勝負を求めた場所。 |
物語を巡る
— 六つのカードから『与茂七の帰藩』の核心を巡る —
物語を辿る
— 七つの転換点から、野牛と白い虎の物語を辿る —
1. 白い虎

進武館で「白い虎」と呼ばれる金吾三郎兵衛。与茂七の竹刀を投げ捨て、帰藩した野牛を待ち受ける。
2. 野牛、帰る

三年の江戸詰めを終え、斎東与茂七が彦根へ帰る。かつて進武館の筆頭として恐れられた「野牛」の帰藩だった。
3. 二人の荒武者

進武館で与茂七と三郎兵衛が初めて向き合う。周囲の門人たちは、二人の勝負が始まると息をのむ。
4. 逃げた与茂七

金吾三郎兵衛と名乗られた瞬間、与茂七は勝負をやめて道場を去る。誰より喧嘩早かった男の意外な行動に皆が驚く。
5. 城中の挑戦

礼日の彦根城。三郎兵衛は衆人環視の中で与茂七を呼び止め、勝負を迫る。与茂七は自分の負けだと言い切る。
6. 松子が運んだ手紙

夕暮れ、松子が三郎兵衛からの書状を与茂七へ届ける。そこには離縁と、松原湖畔での決闘の申し出が記されていた。
7. 霧の亀形の丘

濃霧の湖畔で勝負を終えた二人。与茂七は、三郎兵衛の姿に二十八年間の自分自身を見たのだと明かす。
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