朗読作品

謎の密室

野村胡堂 →
市ヶ谷田町の分限者・上総屋重三郎が、鉄の箱のように閉ざされた離屋で死んでいた。右利きのはずの主人が左手に短刀を握り、昨夜まであった蚊帳だけが消えている。池田大助が小さな矛盾から密室のからくりへ迫る。
池田大助と破られた離屋を描いた『謎の密室』の代表画像

THIS WORK

この作品を、どう辿りますか。

あらすじ

市ヶ谷田町の分限者・上総屋重三郎が、厳重に戸締りされた離屋で死んでいた。戸にも窓にも、誰かが忍び込んだ形跡も、そこから逃げ出した形跡もない。

ところが、右利きだった重三郎は左手に短刀を握っていた。そして、昨夜まで寝床に吊られていたはずの蚊帳だけが消えている。甥の喜八、美しいお咲、番頭勘次郎、隣家の大工棟梁・伝吉。池田大助は、鉄の箱のような密室に残された小さな矛盾を追っていく。

登場人物

  • 池田大助 — 二十五歳の若き探索者。細かな矛盾を積み重ね、密室の成立そのものを見直していく。
  • 源太 — 御用聞。右利きの主人が左手に短刀を握っていることを不審に思い、大助へ出役を頼む。
  • 仙太郎 — 飴屋の少年。大助から『孝経』を習いながら、今回も探索に加わる。
  • 重三郎 — 上総屋主人。六十歳。「鬼の重三」と呼ばれる頑固な分限者。
  • 勘次郎 — 上総屋の番頭。神経質だが帳簿と算盤には極めて正確。
  • 喜八 — 重三郎の甥。お咲との縁組と家督をめぐって叔父との仲が悪化している。
  • お咲 — 重三郎の遠縁。かつて東慶寺へ駆け込み、離縁した過去を持つ女性。
  • お今 — 上総屋の下女。
  • 伝吉 — 隣家の大工棟梁。離屋の普請にも関わっている。

用語集

  • 分限者(ぶげんしゃ) — 財産を持つ裕福な者。
  • 離屋(はなれ) — 母屋から分かれて建つ建物。
  • 閂(かんぬき) — 戸を内側から固定する横木。
  • 海老錠(えびじょう) — 古い形式の頑丈な錠前。
  • 肌守り(はだまもり) — 身につける守り袋など。
  • 東慶寺(とうけいじ) — 作中で、お咲が離縁のため駆け込んだ寺として語られる。

物語を巡る

— 五つの違和感から『謎の密室』を辿る —

唄本を聴く

『謎の密室』の世界を音楽でもお楽しみください。

物語を辿る

— 場面を追いながら、密室の違和感を確かめる —

1. 源太が持ち込む密室事件

源太が池田大助へ市ヶ谷田町の不可解な事件を知らせる発端場面
源太が持ち込む密室事件

池田大助のもとへ、右利きの男が左手に短刀を握って死んでいたという知らせが届く。

2. 上総屋のお咲

上総屋の廊下で池田大助がお咲と行き会う場面
上総屋のお咲

上総屋で大助は、美しくどこか謎めいたお咲と行き会う。

3. 鉄の箱のような離屋

池田大助と源太が厳重に閉ざされた離屋を検分する場面
鉄の箱のような離屋

戸、窓、格子、閂。人が出入りできたとは思えないほど厳重な離屋を大助が調べる。

4. 関係者への聞き取り

池田大助が上総屋の関係者から事情を聴く場面
関係者への聞き取り

家督とお咲をめぐる人間関係が、事件の背景として浮かび上がる。

5. 静かな問いかけ

池田大助が静かな座敷で事件の事情を整理する場面
静かな問いかけ

大助は証言の食い違いと、夜の時間の流れを一つずつ確かめていく。

6. 下水から現れた手掛かり

塀外の下水付近から隠された蚊帳と着物が見つかる場面
下水から現れた手掛かり

消えていた蚊帳と着物が意外な場所から見つかり、事件は大きく動き出す。

7. 密室の成立

上総屋の離屋で朝の混乱と施錠の仕掛けを想起させる場面
密室の成立

密室は夜のうちに完成していたのか。大助は朝の混乱そのものに目を向ける。

作品情報

作品:『謎の密室』/シリーズ:池田大助捕物帳/作者:野村胡堂/制作:丸竹書房

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