作家記事
銭形平次、383編の長い旅
1931年に始まり、1957年まで続いた『銭形平次捕物控』。383編という長い連作は、なぜこれほど読まれ続けたのでしょうか。
『銭形平次捕物控』は、1931年(昭和6年)から『オール讀物』に登場し、1957年(昭和32年)までに383編が書かれました。一人の岡っ引きを主人公に、これほど長期にわたって事件と人間模様を描き続けたこと自体が、野村胡堂の代表的な仕事です。
シリーズの魅力は、謎解きだけではありません。平次は事件の真相へ迫りながら、罪を犯した人間の背景や事情にも目を向けます。盛岡市の紹介では、胡堂自身が平次について、悪意と善意を同じ尺度で裁かない人物として書いていたことが紹介されています。
音本倶楽部では、この膨大な作品群を単純な一覧にせず、事件の型、人情、密室、怪事件、八五郎の活躍など、入り口を変えながら辿れる形へ育てていきます。383編という量は「多すぎる作品数」ではなく、テーマ別に何度でも入り直せる巨大な江戸ミステリ世界と考えることができます。
参考:盛岡市「野村胡堂」