朗読作品
江戸阿呆宮
野村胡堂 →
THIS WORK
この作品を、どう辿りますか。
江戸から、若く美しい女ばかりが消えていく。悲鳴もなく、争った跡もなく、足跡さえ残らない。人々が「神隠し」と恐れる事件に、銭形平次が挑む。
あらすじ
去年の暮から、江戸では若い女たちが一人、二人と行方不明になっていた。やがて失踪は月に三、四人へ増え、三十人ほどに及ぶ。しかも、悲鳴も争った跡もない。
平次は怪異を否定し、石原の利助の娘・お品の協力を得て、失踪者の町、年齢、家業、日時を一から洗い直す。八五郎は吉原や四宿を調べ、平次自身も街道や船番所を探索するが、消えた女たちは江戸の外へ出ていない。
そしてお品の一覧から、女が消えた町はすべて、豪商・巴屋三右衛門が施米を行った町だったという規則性が浮かび上がる。善行と神隠しを結ぶ糸を追った先で、平次は江戸の常識から隔絶した秘密の世界へ辿り着く。
登場人物
- 銭形平次 — 神隠しと呼ばれた連続失踪事件を、人間の仕業と見抜いて追う。
- 八五郎(ガラッ八) — 平次の子分。盛り場の聞き込みから現場捜査まで奔走する。
- お品 — 石原の利助の娘。失踪者一覧を作り、事件の共通点を見つけ、自ら囮役にも踏み込む。
- お静 — 平次の女房。旅から戻った平次を迎える。
- 巴屋三右衛門 — 江戸有数の豪商。各町で施米を行い、慈善家として名を知られる。
- 甚三郎 — 巴屋の隣に住む早桶屋。左頬に古い傷がある片意地者。
- 三輪の万七 — 御用聞。別の手掛かりから浪花屋を捕縛する。
用語集
| 用語 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 施米 | せまい | 米を施すこと。作中では巴屋が町ごとに行う慈善。 |
| 四宿 | ししゅく | 品川・新宿・板橋・千住の江戸四宿。 |
| 早桶 | はやおけ | 葬送に用いる棺桶。 |
| 女護島 | にょごのしま | 女性だけが住むとされた伝説上の島。阿呆宮の異様さを示す比喩。 |
| ギヤマン | ぎやまん | ガラス製品を指す当時の語。 |
物語を巡る
— 七つの訴求から『江戸阿呆宮』の核心へ —
物語を辿る
章順の要約ではなく、事件を動かす六つの転換点を、場面画像とともに辿ります。
また神隠し

八五郎が平次宅へ飛び込み、新たに三人の女が消えたと知らせる。江戸を震え上がらせる「神隠し」は、すでに三十人近くに及んでいた。
争った跡がない

鋳掛屋の娘おらくの家でも、外から押し入った痕跡と、娘自身が雨戸を開けたような矛盾が残る。平次は、さらわれた女たちが誰一人抵抗していないことを不審に思う。
失踪と施米がつながる

お品が作成した一覧を前に、平次は決定的な規則へ到達する。失踪の起きた町は、すべて巴屋三右衛門が施米を行った町だった。
お品、自ら囮へ

次の施米日に囮を置く策を考える平次。危険な役目を止められながら、お品は父・利助の名を守るため、自ら事件の中へ入る。
銭形の印は本物か

お品が消えたあと、橋々には銭形の印が残される。しかし印は整いすぎ、場所も都合がよすぎる。平次は「お品が残した手掛かり」という前提そのものを疑う。
壁の向こうの江戸阿呆宮

追跡の先で平次と八五郎が目にしたのは、土蔵と廊下、泉水、異国の調度を尽くした秘密の歓楽境だった。ここで事件の意味が一変する。
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