朗読作品

下頭橋由来

吉川英治 →
石神井川の橋の下で、十三年にわたり人々へ頭を下げ続ける乞食・岩公。村人に愛される男の正体が明かされたとき、過去の罪と長い贖罪、そして仇討ちの正義が衝突する。吉川英治が描く、静かで深い人情時代小説。
吉川英治『下頭橋由来』、月夜の橋で岩公を偲ぶ花嫁お次

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この作品を、どう辿りますか。

あらすじ

練馬と板橋を結ぶ街道の仮橋の下で、毎日旅人に頭を下げて暮らす乞食・岩公。樽屋の娘・お次は、稽古へ通うたびに一文を施し、いつしか彼の一心なお辞儀に親しみを覚えていた。ある日、お次が川へ落とした銀の釵を、岩公は何日も泥の中で探し続け、季節が変わってからついに見つけ出す。

岩公は、川へ落ちた子供を救い、村の汚れ仕事を黙って引き受け、十二、三年の間に土地の人々から愛される存在になっていた。だが旅の武士・岡本半助が彼を「佐太郎」と呼んだ瞬間、その過去が暴かれる。十三年前、若党だった佐太郎は半助の妹・八重を連れ出し、追ってきた弟を討ち、八重を自害へ追いやっていた。

樽屋の若者たちは現在の岩公を守ろうとし、三右衛門は娘お次の願いを受けて沢庵樽に隠して逃がそうとする。しかし半助は見抜いていた。岩公の死後、粗末な小屋から見つかったのは七十四両余りの銭と、「下頭億万遍一罪消業」と記された袋。長年の施しを自分のために使わず、頭を下げ続けることそのものを贖罪としていた事実が明らかになる。やがてその金は、人々を守る橋へと姿を変える。

登場人物

岩公(佐太郎)
石神井川の橋の下で暮らす乞食。村では働き者として愛されるが、かつて武家奉公をしていた佐太郎という過去を持つ。

お次
練馬の沢庵漬問屋・樽屋の娘。十八歳。岩公へ一文を施し、銀の釵をめぐって心を通わせる。

樽屋三右衛門
お次の父。旧家・樽屋の主人。現実的な人物だが、娘の願いを受けて岩公を逃がす策を講じる。

岡本半助
小田原・大久保家の家臣。弟と妹の仇である佐太郎を十年以上追い続けてきた武士。

八重
岡本半助の妹。かつて佐太郎に連れ出され、その後、自ら命を絶つ。

庄吉
樽屋の若い者。三右衛門の指示を受け、沢庵樽を利用した岩公の逃亡計画に加わる。

樽屋の若者たち
岩公を悪人とは思えず、半助へ引き渡すことを拒む村の働き手たち。

用語集

お菰
菰をまとって暮らす乞食を指す呼び方。作中では岩公をこう呼ぶ。

寛永通宝
江戸時代に広く流通した銭貨。お次は稽古へ出るたび、穴のあいた一枚を岩公へ施す。


かんざし。お次が川へ落とした銀の釵が、岩公との関係を象徴する重要な品となる。

仮橋
洪水などで流されやすい簡素な橋。石神井川に架かり、物語の中心舞台となる。

沢庵漬
練馬名産の大根を漬けた保存食。樽屋の商いであり、岩公の逃亡計画にも利用される。

大八車
大量の荷物を運ぶ大型の二輪荷車。沢庵樽を運び出す場面で使われる。

仇討免状
仇討ちを正規の手続きとして行うために関わる許可・証明。半助は法的な手続きを取る選択肢も考える。

下頭億万遍一罪消業
岩公が銭袋へ記した言葉。頭を下げること億万遍、一つの罪業を消すという、彼の贖罪の生き方を象徴する。

鐚銭
質の低い銭貨の総称。岩公が一文一文集めた銭は、やがて橋普請へ使われる。

橋普請
橋を造る工事。岩公の残した七十余両は街道安全の橋建設へ充てられる。

物語を巡る

— 「悪党にも、意地がある」文豪横断企画の8枚から『下頭橋由来』の核心へ —

物語を聴く

— 声で『下頭橋由来』を辿る —

本動画は、野村胡堂『大盗懺悔』・山本周五郎『竹槍念仏』・吉川英治『下頭橋由来』を収録した総集編「悪党にも、意地がある」です。

物語を辿る

— 八つの場面から『下頭橋由来』を辿る —

1. 橋の下の岩公

吉川英治『下頭橋由来』場面1「橋の下の岩公」
仮橋の下で旅人へ一心に頭を下げる岩公。お次は稽古へ通うたび、一文ずつ施し続ける。

仮橋の下で旅人へ一心に頭を下げる岩公。お次は稽古へ通うたび、一文ずつ施し続ける。

2. 銀の釵を探す

吉川英治『下頭橋由来』場面2「銀の釵を探す」
お次が落とした銀の釵を、岩公は泥の深い川へ入り、何日も探し続ける。やがて春になり、釵はお次の手へ戻る。

お次が落とした銀の釵を、岩公は泥の深い川へ入り、何日も探し続ける。やがて春になり、釵はお次の手へ戻る。

3. 村に根づく岩公

吉川英治『下頭橋由来』場面3「村に根づく岩公」
岩公は子供を助け、汚れ仕事を引き受け、村人に親しまれる。乞食でありながら、村の暮らしに欠かせない存在となっていた。

岩公は子供を助け、汚れ仕事を引き受け、村人に親しまれる。乞食でありながら、村の暮らしに欠かせない存在となっていた。

4. 佐太郎の正体

吉川英治『下頭橋由来』場面4「佐太郎の正体」
旅の武士・岡本半助が岩公を「佐太郎」と呼ぶ。十三年間隠されていた過去と仇討ちが、村の平穏を破る。

旅の武士・岡本半助が岩公を「佐太郎」と呼ぶ。十三年間隠されていた過去と仇討ちが、村の平穏を破る。

5. 沢庵樽の逃亡計画

吉川英治『下頭橋由来』場面5「沢庵樽の逃亡計画」
三右衛門たちは、沢庵樽を積んだ大八車の中へ岩公を隠し、半助の目を欺いて逃がそうとする。

三右衛門たちは、沢庵樽を積んだ大八車の中へ岩公を隠し、半助の目を欺いて逃がそうとする。

6. 逃亡発覚

吉川英治『下頭橋由来』場面6「逃亡発覚」
半助は逃亡計画を見抜き、荷車を追う。樽から岩公が現れた瞬間、長く先延ばしにされてきた過去との決着が迫る。

半助は逃亡計画を見抜き、荷車を追う。樽から岩公が現れた瞬間、長く先延ばしにされてきた過去との決着が迫る。

7. 七十四両と贖罪

吉川英治『下頭橋由来』場面7「七十四両と贖罪」
岩公の小屋から見つかったのは七十四両余りの銭と、「下頭億万遍一罪消業」の文字。十三年の沈黙が贖罪だったことが明らかになる。

岩公の小屋から見つかったのは七十四両余りの銭と、「下頭億万遍一罪消業」の文字。十三年の沈黙が贖罪だったことが明らかになる。

8. 花嫁お次の別れ

吉川英治『下頭橋由来』場面8「花嫁お次の別れ」
嫁入りの日、お次は橋の上で駕籠を止め、岩公が探し出した銀の釵を石神井川へ返す。物語は静かな別れで閉じる。

嫁入りの日、お次は橋の上で駕籠を止め、岩公が探し出した銀の釵を石神井川へ返す。物語は静かな別れで閉じる。

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