
THIS WORK
この作品を、どう辿りますか。
あらすじ
少年の日の悔しさから始まった小三郎の歩みは、三浦主水正として、ついに藩の命運を左右するところまで進む。下巻では、崩れゆく旧体制、御新政の改廃、昌治の帰還、滝沢兵部との長い因縁、そして主水正自身が選ぶ最後の道までを描く。多くのものを越え、多くのものを失い、それでも人は前へ進む。物語の終盤で、『ながい坂』という題名の意味が静かに、そして大きく回収される。
坂は、登りつめて終わるものではない。
登場人物
- 三浦主水正
- 本作の主人公。少年時代の小三郎から長い歳月を経て、藩の将来を背負う立場へ進む。下巻では政局の決着と、その先の責任に向き合う。
- 飛騨守昌治
- 藩主。主水正の力量を認め、藩政の大きな転換に関わる。
- 三浦つる
- 主水正の妻。長い夫婦の時間を経て、主水正の生活と心を支える存在となる。
- 滝沢兵部
- 名門滝沢家の後継。主水正と若い頃から深い因縁を持ち、下巻ではその人生の決着が描かれる。
- 滝沢主殿
- 長く城代家老を務めた重臣。旧来の藩政と新しい時代の間に立つ。
- 谷宗岳
- 主水正の師。学問と生き方の双方で主水正に大きな影響を与えた人物。
- ななえ
- 主水正と長い縁を持つ女性。宗岳らとともに物語後半の人間関係を支える。
- 杉本大作
- 主水正を支える実務家。政局の変化の中でも行動をともにする。
- 津田大五
- 主水正の危機に関わり、独自の行動力で情勢を探る人物。
- 六条図書
- 御新政を進める側の中心人物として、主水正たちと政治的に対立する。
- 桑島三右衛門
- 五人衆の一人。藩の商業・金融の動きを読み、上方資本の影響を警戒する。
用語集
- 御新政
- 政権交代後に進められた新しい政治。旧弊打破を掲げる一方、別の混乱と対立を生む。
- 城代家老
- 城や藩政を預かる最高位級の重臣。滝沢家が長くその地位を占めてきた。
- 五人衆
- 藩の御用を担い、商業・金融に強い影響力を持つ有力商人たち。
- 御用商
- 藩の物資調達や金融など、藩用を請け負う商人。
- 上方資本
- 大坂・京都方面の大商人資本。藩内経済に強い影響を及ぼす。
- 銭札
- 領内で流通させる紙の通貨。発行や信用の問題が藩財政と結びつく。
- 参覲
- 藩主が江戸へ赴くこと。作中では政局の節目と深く関わる。
- 下屋敷
- 江戸に置かれた大名屋敷の一つ。上屋敷とは別の用途を持つ。
- 捨て野
- 利用価値が低いと見られてきた土地。主水正の再起や農政の現実と関わる。
- 新畠
- 新しく開墾した畑。土地を生かし、人の暮らしを立て直す象徴として描かれる。
物語を辿る
— 第21章から終章まで、十の章と二種類のビジュアルから『ながい坂 下巻』を辿る —
第二十一章
戻るべき場所へ戻ったとき、人はようやく失ったものを知る。

章の象徴

第二十二章
古い知恵は、時代が変わっても道を照らすことがある。

章の象徴

第二十三章
誇りを失った人間ほど、自分を許すことがむずかしい。

章の象徴

第二十四章
過去を片づけなければ、新しい時代は始められない。

章の象徴

第二十五章
時は止まらない。だから人も、立ち止まってはいられない。

章の象徴

第二十六章
信じられなくなったときこそ、その人の本当が試される。

章の象徴

第二十七章
大きな変革ほど、静かに成し遂げられる。

章の象徴

第二十八章
勝ったあとに残るのは、栄光ではなく次の責任である。

章の象徴

第二十九章
救うとは、相手を変えることではなく、立ち直る場所を残すことだ。

章の象徴

終章
登りつめた先に、さらに長い坂がある。

章の象徴

感謝にかえて
小説の達人、山本周五郎の描いた最後の長編小説『ながい坂』を最後までお読みいただき、ありがとうございました。少年の日の悔しさから始まった小三郎――のちの三浦主水正の歩みは、やがて一人の人生を越え、家族、藩、土地、そして多くの人々の暮らしへとつながってゆきました。
この長い物語を、上巻・中巻・下巻と最後までお付き合いいただけたことを、丸竹書房一同、心より感謝申し上げます。
ひとつの坂を越えた先に、また新しい坂がある。山本周五郎が描いたこの物語が、読者のみなさまの心のどこかに長く残りましたら幸いです。
坂の先へ
『ながい坂』を電子書籍としてまとめるにあたり、私たちは原文の言葉をできるだけ損なわず、その一方で、章扉、象徴画像、一行コピー、朗読との連動など、現代の読者が作品へ入りやすくなる工夫を加えました。しかし、この本の中心にあるものは、あくまで山本周五郎の文章です。
主水正が最後に気づく「さらに長い坂」は、特別な人物だけのものではありません。読み終えた人それぞれの前にも、それぞれの坂が続いている。だからこそ、この物語は読み継がれてゆくのだと思います。