朗読作品
吉川英治『鬼』|人を救うため、鬼になった
吉川英治 →
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この作品を、どう辿りますか。
人を救うため、鬼になった。
「米喰い虫」と嘲られた津軽藩士・棟方与右衛門。彼が選んだ奉公は、洪水に苦しむ津軽平野を治め、荒野を田へ変えることでした。人々に恨まれながらも未来を切りひらこうとした男の信念と犠牲を、吉川英治が重厚に描きます。
あらすじ
津軽藩士・棟方与右衛門は、逃亡した同僚・福原主水を討てなかったことで「米喰い虫」と嘲られます。自分にできる真の奉公とは何かを考え続けた末、彼が見いだしたのは、氾濫を繰り返す津軽平野の治水と開墾でした。
豪雨、吹雪、人手不足、資金難、そして領民の反発。与右衛門は自ら土を担ぎ、石を運び、ときには娘のお珠にも情を見せず工事を進めます。人々は彼を「鬼」と呼びました。しかし、その厳しさの先にあったのは、自分の栄誉ではなく、次代の人々が生きる豊かな田園でした。
登場人物
棟方与右衛門
津軽藩士。津軽平野の治水と開墾に生涯を賭け、目的のためには自分にも他人にも厳しく振る舞う。
お珠
与右衛門の一人娘。父とともに工事場へ移り、人足の世話をしながら父の孤独と信念を最も近くで見つめる。
福原主水
藩を逃れた元津軽藩士。与右衛門に追われるが、後に意外な姿で工事場へ戻る。
十川安太郎
十川村の郷士の青年。お珠を慕い、与右衛門の苛烈さに反発しながらも事業の意味を知っていく。
用語集
- 碇ヶ関:津軽領の南口に位置する関所。物語序盤、与右衛門と福原主水が対峙する重要な場所。
- 五所川原:津軽平野北部。与右衛門が治水・開墾事業を進める主要舞台。
- 人税:金銭や米ではなく労働力を徴発する負担。工事に動員された百姓たちの反発を招く。
- 二百十日:立春から数えて二百十日目。風雨の災害が警戒された時期として物語の自然描写にも重なる。
- 津軽平野:河川の氾濫と湿地に苦しめられてきた広大な平野。本作では、人間と自然のせめぎ合いを象徴する舞台。
物語を巡る
— 五つの場面から『鬼』を辿る —
物語を聴く
— 声で『鬼』を辿る —
物語を辿る
— 荒野から青田へ。与右衛門の歩みを物語順に辿ります —
1. 弘前城での叱責
主水を討てなかった与右衛門が、藩主から厳しく叱責される場面。

2. 碇ヶ関の山中
逃亡した福原主水を追いつめながら、与右衛門が刀を抜けずに葛藤する場面。

3. 吹雪の小屋と治水図
閉門後の与右衛門が、娘お珠と暮らしながら津軽平野の治水計画を練る場面。

4. 荒野を前にして
五所川原の荒野を前に、父娘が巨大な開墾事業へ踏み出す場面。

5. 大規模な治水工事
土や石を運ぶ人足とともに、与右衛門自身も工事へ身を投じる場面。

6. 百姓たちの怒り
重い労役に苦しむ百姓たちが、工事を進める与右衛門へ怒りを向ける場面。

7. 完成へ向かう築堤
困難を越え、治水工事が少しずつ形を成していく転換点。

8. 暴風雨との闘い
完成目前の工事を暴風雨が襲い、与右衛門たちが再建へ立ち向かう場面。

9. 青田と祭りの朝
荒野だった土地が青田へ変わり、人々が実りを実感する場面。

10. 鬼が背負った責任
工事の犠牲と責任をひとり背負う与右衛門の孤独を象徴する場面。

作品:『鬼』 作者:吉川英治 朗読:七味春五郎 制作:丸竹書房/OTOBON
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