
THIS WORK
この作品を、どう辿りますか。
あらすじ
小網町の袋物問屋・丸屋では、跡取りの染五郎と若妻お絹が無理やり引き離されていた。土蔵の二階へ閉じ込められた染五郎と、川向こうの実家へ帰されたお絹を結ぶのは、かつて二人が使った紅い鹿の子絞りの扱帯――「万事上首尾、忍んで来い」という恋の合図だった。ところが翌朝、主人の六兵衛が路地で殺され、小さな女下駄の足跡、川から見つかったお絹の短刀、夜の訪問という証拠が若妻を追い詰める。だが平次は、あまりにも揃いすぎた証拠に違和感を覚える。恋、嫉妬、偽装、そして一瞬の心の迷いが交錯する捕物である。
登場人物
銭形平次
江戸の岡っ引。揃いすぎた証拠に疑問を抱き、事件の裏側を読み解く。
八五郎(ガラッ八)
平次の子分。丸屋六兵衛殺しの捜査に乗り出し、若妻お絹を捕らえる。
丸屋六兵衛
小網町二丁目の袋物問屋「丸屋」の主人。頑固で一徹な商人。
染五郎
丸屋の跡取り。六兵衛の実子ではなく甥として引き取られた青年。妻お絹を深く愛している。
お絹
染五郎の若妻。夫との仲を六兵衛に裂かれ、新茅場町の実家・福井屋へ戻される。
お半
丸屋に身を寄せる若い女。染五郎とお絹を懸命に取り持つが、胸の奥には複雑な思いを抱える。
石巻左陣
丸屋の裏長屋に住む浪人。袋物の内職や占いをして暮らし、捕物にも強い興味を示す。
宗助
丸屋の番頭。実直で、主人の手元から金が不足していることに気づく。
留吉
丸屋の小僧。染五郎を心配し、紅い扱帯の秘密を八五郎へ話す。
三輪の万七
別系統の岡っ引。独自の捜査からお半に疑いを向ける。
用語集
扱帯(しごきおび)
細長い布状の帯。作中では紅い鹿の子絞りの扱帯が、染五郎とお絹の秘密の合図として使われる。
鹿の子絞り
布を括って染め、細かな白い斑点模様を作る絞り染め。紅い扱帯の印象を強める意匠。
鎧の渡し
小網町と川向こうを結ぶ渡し舟。染五郎とお絹の恋の記憶と、事件の目撃証言を結ぶ舞台。
袋物問屋
財布、巾着、煙草入れなどの袋物を扱う商家。丸屋六兵衛の商売。
土蔵
厚い壁を持つ蔵。染五郎はその二階へ閉じ込められる。
駒下駄
小型の下駄。事件現場の小さな足跡が、女による犯行を思わせる手がかりとなる。
公事師(くじし)
訴訟や公事の手続きに関わる者。本文では六兵衛の処置が当時の社会通念上容易に覆せないことを示す。
戌刻・亥刻
江戸時代の時刻表現。本文では戌刻を八時ごろ、亥刻を十時ごろとしている。
口書
取り調べで得た供述を記録した文書。
物語を巡る
— 三つのビジュアルから『紅い扱帯』を辿る —
物語を聴く
— 声で『紅い扱帯』を辿る —
唄本を聴く
— 『紅い扱帯』の世界を音楽で辿る —
主題歌 1
主題歌 2
主題歌 3
物語を辿る
— 五章と終幕から、事件と人の心の動きを追う —
第一章 川向こうの紅い扱帯
土蔵の二階へ閉じ込められた染五郎と、川向こうの実家へ帰されたお絹。二人は、かつて恋人同士だったころの秘密の合図――紅い鹿の子絞りの扱帯で心をつなぐ。

第二章 路地の死と、残された赤い帯
翌朝、丸屋六兵衛が店と土蔵の間の路地で死んでいるのが見つかる。八五郎は、小さな下駄の足跡と、土蔵の窓に残る紅い扱帯へ目を向ける。

第三章 「証拠が揃いすぎている」
お絹を捕らえた八五郎は、足跡、短刀、夜の訪問という証拠を平次へ報告する。しかし平次は、整いすぎた筋書きそのものを疑う。

第四章 平次、丸屋の裏を読む
平次は丸屋へ出向き、路地、木戸、土蔵、裏長屋の位置と、そこにいた人物たちの動きを丹念に確かめる。

第五章 女下駄と、下水の三百両
平次が石巻左陣の家で見つけた女下駄は、事件現場の足跡へつながる。さらに八五郎が下水から隠された金包と脇差を探し出し、仕組まれた証拠が崩れていく。

終幕 善人の心に、一瞬の影
事件の真相が明らかになったあと、平次はお半の行動に潜んでいた嫉妬と心の迷いを語る。犯人を挙げるだけでは終わらない、人情捕物の余韻が残る。

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